犬と猫の腎盂腎炎とは|症状・原因・治療について獣医師が解説

「急に元気がなくなった」
「熱がある」
「おしっこの臭い・色がおかしい」。

犬や猫にこのような症状がみられたときは、『腎盂腎炎』(じんうじんえん)と言う病気が隠れていることがあります。

腎盂腎炎は、腎臓に細菌感染が起こる病気で、重症になると腎機能の低下や全身状態の悪化、最悪の場合は命に関わることもあるため、早期の診断と治療が必要となります。


腎盂腎炎とは?

腎盂腎炎は、細菌が腎盂や腎臓の組織に感染して炎症を起こす病気です。

(「腎盂」とは腎臓内で作られた尿が最終的に集められる部位を指します。)

多くの場合は膀胱から細菌が尿管をさかのぼって腎臓へ感染することで引き起こされます。
一方で、血液中に入った細菌が腎臓へ到達することで発症することもあります。

膀胱炎はほとんどが膀胱内に炎症が限定されますが、腎盂腎炎は発熱や元気・食欲の低下などの全身症状を伴いやすいことが特徴です。


原因は?

腎盂腎炎の多くは細菌感染によって起こります。多くはないですが寄生虫、真菌、ウイルスなどが原因となる事もあります。

次のような状況がきっかけになる事が多いです。

  • 細菌性膀胱炎
  • 尿路結石
  • 尿路閉塞
  • 膀胱の機能障害(排尿異常・蓄尿以上)
  • 尿道カテーテルなどの処置
  • 腎臓や尿路の構造的な異常
  • 泌尿器の手術 など

また、糖尿病や免疫力が低下する病気などの基礎疾患を持っていたり、免疫抑制剤を服用している場合にも尿路感染症が起こりやすくなることがあります。

腎盂腎炎をの治療は抗菌剤で感染を抑え込むことですが、「なぜ感染が起こったのか」という背景まで調べることが重要です。


腎盂腎炎ではどんな症状がみられる?

腎盂腎炎で特別に生じる症状はありませんが、次のような症状がよく見られます。

  • 元気・食欲がない
  • 発熱
  • 嘔吐
  • 飲水量の増加
  • おしっこの量、回数が増える
  • 血尿
  • 腹部や腰のあたりを痛がる など

一方で、腎盂腎炎であっても症状がはっきりしない場合もあります。
また、重症の場合には尿量が減ったり(乏尿)、ほとんど尿が出なくなったり(無尿)することもあります。


腎盂腎炎はどうやって診断する?

腎盂腎炎が疑われる場合には、血液検査尿検査超音波検査レントゲン検査などを組み合わせて診断します。

重要なのが「尿培養検査」「薬剤感受性試験」で、原因になる菌を特定し、その菌に効果のある抗菌薬を確認します。

血液検査では腎機能や炎症の程度を確認し、超音波検査などによって腎臓や尿路の状態、結石や尿路閉塞などの有無を確認します。


腎盂腎炎の治療

腎盂腎炎の治療では、原因となっている細菌に対して適切な抗菌薬を使用することが基本となります。

脱水に対する点滴や、嘔吐に対する制吐剤など、その他の症状にも対応していきます。

また、尿路結石や尿路閉塞など、感染を起こす原因となっている病気に対する治療も必要です。

腎盂腎炎では、抗菌薬をただ長期間飲ませればよいというわけではありません。
尿培養や薬剤感受性試験の結果、症状や血液検査などを確認しながら、その子に適した治療を行うことが大切です。


腎盂腎炎を放置するとどうなる?

腎盂腎炎は、早期に適切な対応を行えば治療できる病気です。

しかし、感染が長期間続いたり、重症化したりすると、腎機能が低下し命に関わることもあります
改善したとしても、腎機能の障害が回復せず慢性腎臓病へと進行し生涯のケアが必要になる場合もあります。

また、細菌が血液中へ広がることで、全身的な感染症(敗血症)につながることもあります。

最初は単純な膀胱炎であっても、時に致命的な状態に悪化してしまう事もあるので、できるだけ早めに受診するようにしてください。


「いつもと違う」そんな時は動物病院へ

腎盂腎炎は、特徴的な症状がある病気ではありません。

尿の色や量の変化が見られることもあれば、一見すると尿は正常に見えることもあります。

「急に元気がなくなった」「食べなくなった」「吐いている」「水を飲む量が変わった」など、普段と違う変化がみられたときには、腎臓や尿路の病気が隠れている可能性があります。

特に上述した「きっかけ」に当てはまる子は要注意です。

腎盂腎炎は、早期に発見して適切な治療を行うことが大切な病気です。

気になる症状がみられた場合には、早めに動物病院で診察を受けることをおすすめします。

このコラムが飼い主のみなさんの参考になれば幸いです。

不安な点、心配な点があれば気軽にご連絡・ご相談ください。

「こんなこと聞いてもいいのかな」と思うことでも尋ねてもらえれば、病院として何かお手伝いができるかもしれません。

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