基本的な治療方針
慢性腎臓病では、残念ながら失った機能は回復せず、そのため完治させることはできない病気です。
このことから、治療の目的は「完治すること」ではなく以下のような「進行を抑えること」になります。
- 腎機能低下の進行をゆるやかに抑える
- 体に溜まってしまう尿毒素(老廃物)を減らす
- さまざまな症状をやわらげ、生活の質を保つ
それぞれの犬のステージや症状に応じて、フードや点滴、薬剤など色々な治療内容を組み合わせていきます。

点滴はなぜ必要?
慢性腎臓病では、腎臓の尿を濃縮する能力が低下し、薄い尿を多量に排出するようになります。
つまり、尿として水分が多く体から出て行ってしまい、そのような状況で十分な水を飲めない状態になると脱水しやすくなります。
このように、脱水がみられる場合には、静脈点滴や皮下点滴などによって水分を補う必要があります。
もちろん点滴をする以前に、脱水しないように家で十分に水分を摂ってもらうことがとても重要です。
点滴の頻度は?
点滴の方法や回数(頻度)に関しては、その子の状態によって決めていきます。
脱水の程度や飲水量、食欲、血液検査の結果、またその子の性格などをもとに判断します。
場合によっては、自宅で皮下点滴をしてもらうこともあります。
どんな薬を使うの?
慢性腎臓病の治療では、病気に伴う症状や検査での異常に応じてさまざまな薬を使います。
- リン吸着剤 :食事中のリンの吸収を抑え、高リン血症を是正します
- 制吐剤 :嘔吐・吐き気を抑える
- 降圧剤 :高血圧を抑える、蛋白尿を抑える
- 造血剤 :貧血を改善させる
- 食欲増進剤
- 整腸剤 など
これらの薬はそれぞれの症状に応じた「対症療法」として使用する薬ですが、問題となる症状を抑えることは元気・食欲を改善し生活の質を維持するためには非常に重要な治療となります。
参考:IRIS 犬猫の慢性腎臓病の診断、ステージングおよび治療
慢性腎臓病は定期的な検査が大切
最初にもお伝えしましたが慢性腎臓病は治せる病気ではないため、その進行を抑えるために継続的なケアが必要になります。
「治らない」と聞くと不安になるかもしれませんが、早期に発見して適切な治療を行っていくことで、残っている腎機能をできるだけ長く維持し、その子の生活の質を保つことが治療の大きな目標になります。
症状がない初期の段階では1〜3か月に1回、定期的に血液検査を行うことが多いです。病気の進行に応じて通院頻度は増えていきます。
- 体重測定
- 血液検査
- 尿検査
- 血圧測定
これらを定期的に確認しながら、治療内容を調整していくことが重要です。
まずは、「日頃からの健診」と「症状に気づいてあげること」、そして「早めの受診」が大切になります。
慢性腎臓病は「長く付き合う病気」です。それぞれの状態に合わせて、その子にしてあげられる治療方針を相談していきましょう。
このコラムが飼い主のみなさんの参考になれば幸いです。
不安な点、心配な点があれば気軽にご連絡・ご相談ください。
「こんなこと聞いてもいいのかな」と思うことでも尋ねてもらえれば、病院として何かお手伝いができるかもしれません。
【犬の慢性腎臓病コラム】
第1回 犬の慢性腎臓病の初期サイン|水をよく飲む・おしっこが増えたら要注意
第2回 犬の慢性腎臓病とは?ステージ分類と血液・尿検査を獣医師が解説
第3回 犬の慢性腎臓病の治療|点滴や薬について獣医師が解説





