「慢性腎臓病と診断されたけど、あとどのくらい生きられる?」
慢性腎臓病と診断された飼い主さんが当然知りたいポイントだと思います。
しかし、犬の慢性腎臓病の余命はIRISステージだけで一律に決められるものではありません。
腎臓病の進行度だけでなく、食欲や体重、脱水の程度、尿検査の結果、蛋白尿、高血圧などの違いでその後の経過は大きく異なります。
今回は、犬の慢性腎臓病の余命を考えるうえで重要なポイントと、自宅でできるケアについて解説します。

犬の慢性腎臓病はどのくらい生きられる?
慢性腎臓病では、すでに失われた腎機能は治すことができず、進行性の病気ですが、診断されたからといってすぐに寿命を迎えるというわけではありません。
早期に発見された場合は、適切な食事療法や治療を続けながら、長期間にわたって良好な生活を維持でき、病気のない犬と同じように一生を過ごすとができる子もいます。
一方で、診断された時点ですでに腎機能が大きく低下している場合には、より注意深い治療や管理が必要になります。
大切なのは「あと何か月」と数字だけを見るのではなく、今の状態を把握し、経過を見守りながら今できるケアを継続していくことです。
慢性腎臓病のステージで余命は決まる?
慢性腎臓病では、IRISのステージ1~4によって腎機能の障害の程度を評価します。
一般的には、ステージが進むほど腎機能が低下しており、予後にも影響します。
ただし、「ステージ2なら○年、ステージ3なら○か月」というように、ステージだけで寿命を予測することはできません。
同じステージ3の犬でも、食欲があり体重を維持できている犬と、食欲がなく体重が減少している犬では状態が大きく異なります。
犬の慢性腎臓病で予後を見るために重要なこと
慢性腎臓病の経過を考えるときには、次のような項目を見て総合的に評価します。
血液検査の推移
血液検査では、尿素窒素やクレアチニン、SDMA、カルシウム、リンなどを確認します。
以前と比べて数値がどのように変化しているかを見ることが重要です。
数値が長期間安定しているのか、それとも徐々に上昇しているのかによって、今後の管理方法も変わってきます。
食欲と体重
慢性腎臓病が進行すると、食欲が低下したり体重が減少したりすることがあります。
このような場合には、栄養状態を確認しながら治療する必要があります。
そのため、自宅でも定期的に体重を測って、変化に早く気づことが重要です。
蛋白尿や高血圧
これらに異常が見られる場合は、慢性腎臓病の進行が早くなることが分かっています。
尿検査や血圧測定を定期的に行い、異常があれば早めに対応することが重要です。
ステージごとの生活のポイント
ステージ1~2
- 定期的な検診(血液検査、尿検査、血圧測定など)
- 水を十分に飲んでもらう工夫
- 腎臓用療法食への食事変更
この段階では進行をゆるやかに抑えることがケア・治療の目的となります。
ステージ3~4
- 脱水の補正(点滴など水分の補給)
- 吐き気・食欲不振への対応
- 貧血や高血圧への対応
この段階ではそれぞれの症状を抑え、生活の質を保つことがケア・治療の目的となります。
自宅でできる脱水対策
慢性腎臓病を持つ犬にとって脱水は最大の敵です。お家で最も重要なケアは「水分をどのように摂ってもらうか」です。
飲水を促し、脱水を防ぐために以下のような工夫が考えられます。
- ウェットフードを与える
- こまめに水を新しいものにする・ぬるま湯にする
- 水の置き場所を増やす
- 水を入れる容器の素材(陶器・プラスチック・ステンレスなど)を変えてみる など
ステージが進むと、病院や自宅での皮下点滴が必要になる事もあります。
「飲水量を確保する」と言葉だけでは単純ですが、実際にはなかなか難しく、しかし最も重要なケアの一つです。
犬の慢性腎臓病は「病気と付き合っていく」ことが大切
慢性腎臓病と診断されると、「治らない病気なのだから、もう何もできないのでは」と不安になるかもしれません。
しかし、慢性腎臓病の治療では、病気を完全に治すことだけが目標ではありません。
『余命』
腎臓の状態を定期的に確認し、食事や薬、水分管理などを適切に行いながら、その子ができるだけ快適に過ごせる時間を長くすることが大切です。
そして、そのためには飼い主さんによる毎日の観察が大きな役割を果たします。
「少し水を飲む量が増えた」
「最近ちょっと痩せた」
「食欲が以前より落ちてきた」
そんな小さな変化が、病気の進行を早期に見つけるきっかけになることがあります。
慢性腎臓病と診断された後も、定期的な検査と毎日のケアを続けながら、その子らしい生活をできるだけ長く維持していきましょう。
このコラムが飼い主のみなさんの参考になれば幸いです。
不安な点、心配な点があれば気軽にご連絡・ご相談ください。
「こんなこと聞いてもいいのかな」と思うことでも尋ねてもらえれば、病院として何かお手伝いができるかもしれません。
【犬の慢性腎臓病コラム】
第1回 犬の慢性腎臓病の初期サイン|水をよく飲む・おしっこが増えたら要注意
第2回 犬の慢性腎臓病とは?ステージ分類と血液・尿検査を獣医師が解説
第4回 犬の慢性腎臓病の食事療法|療法食は必要?食べないときの対処法
第5回 犬の慢性腎臓病の余命は?ステージ別の考え方と自宅でできるケア





