犬の慢性腎臓病は、腎臓の機能や構造が持続的に損なわれていく病気です。
初期には目立った症状がないことも多いため、「腎臓病があることに気づかなかった」というケースも少なくありません。
一方で、早期に発見して適切に管理することで、残っている腎機能をできるだけ長く維持することが期待できます。
今回は、犬の慢性腎臓病について血液検査・尿検査では何を調べるのか、IRISのステージ分類とは何かを獣医師が詳しく解説します。

腎臓の働きとは?
腎臓は以下のような、体にとってとても重要な働きをしています。
- 体の老廃物を尿として排泄する
- 体内の水分バランス・電解質バランスを保つ
- 血圧の調整
- 赤血球を作るホルモンの分泌 など
慢性腎臓病とは
上に並べたような腎臓の機能が少しずつ低下していく状態であり、失われた機能は元には戻りません。
慢性腎臓病の原因はさまざまですが、以下のようなものが考えられます。
- 加齢
- 体質・遺伝性
- 過去の腎臓・尿路の障害(結石や感染症)
- 高血圧 など
ただし、実際に慢性腎臓病と診断する時点では、原因が特定できない場合も多いです。
慢性腎臓病の症状
- 水をたくさん飲む
- おしっこの量が増える
- 食欲が低下する
- 体重が減少する
- 嘔吐する
- 元気がなくなる など
ただし、初期には目立った症状がないことも多いため、「腎臓病があることに気づかなかった」というケースも少なくありません。一方で、早期に発見して適切に管理することで、残っている腎機能をできるだけ長く維持することが期待できます。
そのため、特に中高齢の犬では、症状がなくても定期的な健康診断を受けることが重要です。
IRISステージ分類を解説
慢性腎臓病は進行度によって各ステージに分類されます。IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)という組織によって提唱されているためこれを『IRISステージ分類』と言います。
このステージによって、治療方針や予後が大きく変わります。
- ステージ1(初期):腎臓の構造異常や尿蛋白の出現
血液検査では異常なし、あるいは腎数値の軽微な上昇のみで一見大きな異常は見られません。
そのため、超音波検査と尿検査が重要となります。 - ステージ2:軽度の腎機能低下 明確な腎数値の上昇・尿比重の低下
このステージから慢性腎臓病の進行を抑えるための食事療法が重要になってきます。 - ステージ3:中等度の腎機能低下 さらなる腎数値の上昇
このステージ以降は様々な症状が見られるため、それぞれの症状への対応が必要になります。 - ステージ4:重度の腎不全状態 重度の腎数値の症状
これらのステージは主に血液検査での数値(クレアチニン・SDMA)により分類されます。
サブステージ
ステージ1~4の中にはサブステージというものもあり、以下の2つの項目を評価します。
- 血圧
- 蛋白尿
これらに異常がある場合は、より早く治療を開始する必要があります。
重要なのは早い段階で発見できるほど、進行をゆるやかに抑えることが可能ということです。
参考:IRIS 犬猫の慢性腎臓病の診断、ステージングおよび治療
血液検査で何がわかる? クレアチニン・尿素窒素・SDMA
慢性腎臓病の診断で重要なのが血液検査です。これらの値によって重症度を評価します。
- クレアチニン(Cre):腎機能低下で上昇、筋肉量に影響を受ける
- 尿素窒素(BUN):老廃物の蓄積を反映
- SDMA:より早期から上昇する腎機能マーカー
血液検査以外にも、慢性腎臓病の評価には超音波検査や尿検査、血圧測定を組み合わせて評価することが重要です。
早期発見が難しいと言われる理由
慢性腎臓病は、腎機能の約70%以上が失われるまではっきりした症状が出にくい病気です。
「症状が出たときには、すでに進行している」といった場合が多いです。
だからこそ、元気なときからの定期的な健康診断や、日ごろからよく犬の様子を観察し、わずかな変化に気づいた時に病院へ相談・受診することがとても大切になります。
慢性腎臓病は早期に発見することで、その進行をゆるやかに抑えることができる病気です。
このコラムが飼い主のみなさんの参考になれば幸いです。
不安な点、心配な点があれば気軽にご連絡・ご相談ください。
【犬の慢性腎臓病コラム】
第1回 犬の慢性腎臓病の初期サイン|水をよく飲む・おしっこが増えたら要注意
第2回 犬の慢性腎臓病とは?ステージ分類と血液・尿検査を獣医師が解説





