「下痢が何週間も続いている」
「軟便を繰り返している」
「最近やせてきた」
このような症状が続く犬で疑われる病気のひとつが、慢性炎症性腸症(CIE)です。
以前は人間の病気と同じ「炎症性腸疾患(IBD)」呼ばれたり、「慢性腸症(CE)」と呼ばれていましたが、近年では慢性炎症性腸症という名称が用いられています。
今回は犬の慢性炎症性腸症について解説します。

【関連コラム】
第1回 犬の下痢が治らない|犬の慢性炎症性腸症とは?慢性的な下痢の原因と受診の目安
第2回 犬の慢性腸症=慢性炎症性腸症(CIE)とは?下痢や嘔吐が続く犬で疑われる病気
第3回 犬の慢性腸症=慢性炎症性腸症はどう診断する?内視鏡検査は必要?
第4回 犬の慢性腸症=慢性炎症性腸症の治療|食事療法だけで良くなる?薬は必要?
慢性炎症性腸症とは?
慢性炎症性腸症とは、以下のように定義されています。
「3週間以上続く、または繰り返す消化器症状があり、感染症や寄生虫症・内分泌疾患・腫瘍など他の原因を除外した後に診断される、慢性的な腸管炎症性疾患群」
簡単に言うと、「明らかな原因が認められない3週間以上続く下痢・嘔吐」と言えます。
腸に炎症が続くことで消化や栄養吸収がうまくできなくなり、さまざまな症状が現れます。
ひとつの病気ではなく、複数の病気を含む「疾患群」と考えられています。
以下の図のように大きく4つに分類されており、大多数が「食事反応性腸症」と考えられています。

ただし、これらの病名は治療した後に付けられる名前になるので「診断がついて治療する」と言うよりは、「治療してみて反応したら診断がつく」と言うイメージになります。
蛋白漏出性腸症(PLE)
腸から体内のタンパク質が漏れ出てしまう病気を発症することもあります。
この状態になるとさらに追加での治療・検査が必要になる事もあります。
どんな症状がみられるの?
症状は犬によって異なりますが、以下のような症状がよくみられます。
- 下痢・軟便
- 嘔吐
- 元気・食欲の低下
- 体重減少 など
軽症例では「お腹が弱い犬」と思われていることもあります。
一方で重症例では栄養状態が悪化し、著しい体重減少や低タンパク血症を起こし、命に関わる状態になる事もあります。
なぜ慢性炎症性腸症になるの?
現在も完全には解明されていませんが、複数の要因が関与していると考えられています。
免疫機能の異常
食物や微生物など、本来であればあまり反応しないような刺激に対して、免疫が過剰に反応します炎症が起こると考えられます。
腸内細菌バランスの乱れ
何らかの理由で腸内細菌のバランスが崩れると、炎症が持続してしまう可能性があります。
遺伝的要因
犬種によって発症しやすさが異なることが知られており、遺伝的な関与も示唆されています。
犬種に特徴はあるの?
どの犬種でも発症する可能性がありますが、柴犬、パグに関しては重症化する傾向が強いため、早めの受診をお勧めします。
重症化するとどうなる?
重症化すると、体の機能を維持するのに必要な栄養が吸収できず、衰弱していき命に関わることもあります。
そのため、慢性的な下痢に対しては、早期に診断・治療の方針を立てていくことが大切です。
慢性炎症性腸症はどう診断するの?
慢性炎症性腸症には確定するための特別な検査はありません。
そのため、次のような様々な検査により寄生虫感染や腫瘍・膵臓の異常・内分泌(ホルモン系)疾患など他の病気を除外していく必要があります。
- 糞便検査
- 血液検査
- 尿検査
- 超音波検査
- レントゲン検査 など
場合によっては、次のようなさらに詳しい検査が必要になる事もあります。
- 内視鏡検査
- 病理組織検査
- CT検査 など
治療で良くなる病気なの?
多くの犬では適切な治療によって症状の改善が期待できます。
一つ目の選択肢として、まず食事療法を行います。
- 加水分解食
- 高繊維食
- 新奇タンパク食
- 低脂肪食 など
それでも改善が不十分な場合には、ステロイドなどの免疫抑制剤を使用することがあります。
治療法については別のコラムで詳しく解説します。
犬の長引く下痢や嘔吐は早めにご相談を
慢性炎症性腸症は、犬の慢性的な下痢や嘔吐の重要な原因のひとつです。
「お腹が弱い体質だから」と思っていた症状の背景に、慢性炎症性腸症が隠れていることもあります。
愛犬の軟便・下痢・嘔吐が続いている場合は、お気軽に当院までご相談ください。
このコラムが飼い主のみなさんの参考になれば幸いです。
「こんなこと聞いてもいいのかな」と思うことでも尋ねてもらえれば、病院として何かお手伝いができるかもしれません。




