「慢性炎症性腸症かもしれないと言われた」
「内視鏡検査をすすめられたけど必要なの?」
「血液検査だけでは分からないの?」
犬の慢性炎症性腸症(CIE)は、慢性的な下痢や嘔吐の原因としてよくみられる病気です。
しかし、慢性炎症性腸症はひとつの検査だけで確定診断することはできません。
そのため、さまざまな検査を組み合わせ、他の病気を除外していきます。必要に応じて内視鏡検査も行います。
今回は慢性炎症性腸症の診断方法や内視鏡検査のタイミングについて解説します。
(以前は人間の病気と同じ「炎症性腸疾患(IBD)」呼ばれたり、「慢性腸症(CE)」と呼ばれていましたが、近年では慢性炎症性腸症という名称が用いられています。)

【関連コラム】
第1回 犬の下痢が治らない|犬の慢性炎症性腸症とは?慢性的な下痢の原因と受診の目安
第2回 犬の慢性腸症=慢性炎症性腸症(CIE)とは?下痢や嘔吐が続く犬で疑われる病気
第3回 犬の慢性腸症=慢性炎症性腸症はどう診断する?内視鏡検査は必要?
第4回 犬の慢性腸症=慢性炎症性腸症の治療|食事療法だけで良くなる?薬は必要?
慢性炎症性腸症は「除外診断」でたどり着く病気
慢性炎症性腸症では次のような症状が見られます。
- 軟便・下痢
- 嘔吐
- 体重減少
- 食欲不振
しかし、これらの症状は他の病気でもよく起こります。
例えば、
- 寄生虫感染
- 消化管内異物
- 消化管腫瘍
- 慢性膵炎
- 膵外分泌不全(EPI)
- 副腎皮質機能低下症(アジソン病)
などでも同じような症状がみられます。
そのため、まずは他の病気を除外することが重要です。
症状の重症度チェック
慢性炎症性腸症は症状をスコア化して重症度を評価することが、その後の検査や治療方針を決定するのに重要になります。
スコア化の方法には、以下のような指標があります。
- CIBDAI:活動性・食欲・嘔吐・便の硬さ・排便回数・体重減少の6項目を各0~3点までで評価。
- CCECAI:CIBDAIの6項目に加え、血中アルブミン濃度・腹水や浮腫・かゆみの合計9項目を各0~3点までで評価。
血中アルブミン濃度や腹水・浮腫に関してはお家でのチェックは難しいですが、それ以外の項目は日頃の様子からチェックしてみてください。

どのような検査を行うか
糞便検査
寄生虫感染の有無を確認します。
寄生虫の種類によっては発見が難しく、慢性的な軟便や下痢がみられることがあります。
血液検査
消化管以外の臓器の異常や、他の病気の可能性を調べます。
また、慢性的な下痢・嘔吐の重症度・影響を評価することもできます。
尿検査
腎臓病や内分泌疾患などを確認するために実施します。
レントゲン検査
腹部レントゲン検査では消化管全体や、異物や腫瘍を疑うようなしこりがないかを確認します。
超音波検査
腹部超音波検査では、それぞれの臓器の異常の有無や、消化管の構造をしこりの有無などを詳しく見ることができます。
- 消化管壁の厚さ
- 消化管の構造
- リンパ節の腫大 など
超音波検査だけで慢性炎症性腸症と確定診断することはできませんが、重要な情報をたくさん得ることができます。
CT検査
症状やその他の検査結果によってはCT検査により、全身を詳細に調べることもあります。
内視鏡検査はいつ必要?
次のような場合には内視鏡検査が検討されます。
- 症状が重度
- 食事療法で改善しない
- 体重減少やアルブミンの低下が重度
- 腫瘍との鑑別が必要
内視鏡検査では胃や腸の粘膜を直接観察し、組織を採取(生検)することができます。
病理組織検査の重要性
採取した組織は病理組織検査に提出されます。
この検査によって、
- 腸炎
- リンパ腫などの腫瘍
- その他の消化管疾患
などを区別することができ、結果によって治療方針が全く異なってくる場合があります。
ただし、腸炎とリンパ腫が区別できないような場合もあり、内視鏡検査ですべての異常が区別できるわけではありません。
必ずしも全例で内視鏡が必要なわけではありません
飼い主さんの中には、「腸の病気なら必ず内視鏡が必要?」と思われる方もいます。
しかし、実際にはすべての症例で内視鏡検査が必要になるわけではありません。
症状の程度や検査結果、治療への反応性などを総合的に判断しながら、必要な検査を選択していきます。
食事療法による評価
近年のガイドラインでは、慢性炎症性腸症が疑われる犬に対して、まず食事療法を試みることが推奨されています。
具体的には、次のようなフードを与えることが多いです。
- 加水分解食
- 新奇タンパク食
- 高繊維食
- 低脂肪食 など
一つのフードにつき最低2週間は継続して、症状が改善するか確認します。
食事変更のみで改善する犬も少なくありません。
慢性炎症性腸症の診断は段階的に進めます
慢性炎症性腸症はひとつの検査ですぐに診断できる病気ではありません。
まずは他の病気を除外し、食事療法への反応を確認しながら診断を進めていきます。
必要に応じて内視鏡検査や病理組織検査を行うことで、より正確な診断と適切な治療につなげることができます。
慢性的な下痢や嘔吐でお困りの際は、お気軽に当院までご相談ください。
このコラムが飼い主のみなさんの参考になれば幸いです。
「こんなこと聞いてもいいのかな」と思うことでも尋ねてもらえれば、病院として何かお手伝いができるかもしれません。




