「食物アレルギーかどうか調べる血液検査はある?」
「アレルギー検査で原因の食べ物は分かる?」
「除去食試験って何をするの?」
猫の食物アレルギーが疑われる場合、飼い主さんからこのような質問を受けることがあります。
実は、猫の食物アレルギーは血液検査だけで確定診断できる病気ではありません。
食物アレルギーの診断に必須なのが『除去食試験』です。
今回は、猫の食物アレルギーをどのように診断するのか、よく似た病気と合わせて解説します。

【猫食物アレルギーコラム】
第1回 猫が顔や首をかゆがる原因は食べ物かも?猫の食物アレルギーの症状を獣医師が解説
第2回 猫の食物アレルギーの診断どうするの?除去食試験について解説
第3回 猫の食物アレルギーの治療とフード選び|長期管理のポイントを解説
猫の食物アレルギーを特定するための検査はない
「食物アレルギーかどうかを調べる検査はないの?」
と質問されることがあります。
実は現在の獣医療では、猫の食物アレルギーを確定診断できる単独の検査はありません。
そのため、診断は
- 症状
- 発症年齢
- 病歴
- 皮膚検査 など
を総合的に評価し、他の病気を除外して行います。
診断の基本は除去食試験
現在、食物アレルギーの診断で最も重要とされているのが除去食試験です。
除去食試験とは、アレルギーの原因になりにくい特別な食事だけを一定期間与え、症状の変化を確認する方法です。
診断と治療を兼ねた方法で、もし食事が原因で症状が出ているのであれば、適切な療法食に変更することで症状の改善が期待できます。
※ただし、食事変更を拒否する猫もいるので、この試験を続けられるかは猫の性格にもかかっています。
除去食試験はどのように行うの?
除去食試験では、以下のような療法食を使用することが一般的です。
- 加水分解食
- 新奇タンパク食
「加水分解食」とは、食事中のタンパク質を、免疫が反応しにくいように小さく分解したものです。
「新奇タンパク食」とは、それまで食べたことのないタンパク質を使用したフードです。
基本的には、「今まで食べたことがないものにはアレルギー反応を起こさないはず」という考え方です。
試験期間中は、指定されたフードと水以外のものを口にしないことが重要です。
例えば、
- おやつ
- 人の食べ物 など
これらがアレルギーを引き起こす場合、フードを変えたところでそれらを食べてしまっては治療効果は出ません。
そのため、飼い主さんのご協力がとても大切になります。
どれくらいの期間が必要なの?
除去食試験は一般的に2カ月は継続して判断します。
その子によって改善のスピードは異なりますが、多くの場合は数週間から数か月かけて変化を評価します。
多くの場合、数種類のフードを試す必要がありそれぞれのフードを2カ月継続するため、診断に半年以上かかることもあります。
途中で自己判断によりフードを変更してしまうと正しい判定ができなくなるため、獣医師の指示に従って継続することが重要です。
多頭飼育では特に注意
猫を複数飼育している場合、他の猫のフードを食べてしまうことがあります。
除去食試験中は、次のような対策が必要です。
- 食事場所を分ける
- 食後すぐに片付ける
- 留守中の管理方法を工夫する
食物負荷試験
除去食試験で症状が改善した場合、食物アレルギーが疑われます。
その後、必要に応じて元の食事を再度与え、症状が再発するかを確認することがあります。
これを食物負荷試験といい、元の食事で症状が再発すれば食物アレルギーと診断できます。
除外するべき病気
以下のように多くの病気を検討する必要があります。
皮膚の寄生虫感染
- ヒゼンダニ
- ツメダニ
- ニキビダニ など
皮膚感染症
- マラセチア性皮膚炎
- 細菌性皮膚炎 など
ノミアレルギー性皮膚炎
ノミの唾液に対するアレルギーです。
猫アトピー性皮膚症候群
アトピーと最も症状が似ている病気で、どちらも次のような症状が見られます。
- 顔や首のかゆみ・かき壊し
- 過剰なグルーミング・脱毛
- 小さなぶつぶつ
- ただれたような赤み
食物アレルギーとアトピーが併発することもあり、こうなると診断が複雑になります。
その他の病気
体の違和感や痛み
例えば関節炎や膀胱結石などを抱える猫は、その異常がある部位付近の皮膚をしつこく舐めることがあります。
心因性
何らかのストレスにより体をしつこく舐めるようになることがあります。
きっかけとして、引っ越しや家族構成(人・動物)の変化、寝具などの変化が多いです。
蚊のアレルギー
実際に蚊に刺されたかどうかを確かめることは難しいですが、蚊が出現するシーズンに合わせて症状が出る場合は要注意です。
診断には飼い主さんの協力が欠かせません
食物アレルギーの診断では、
- 適切な療法食を選ぶこと
- 指示された期間継続すること
- 他の食べ物を与えないこと
が非常に重要です。
除去食試験は時間がかかる検査ですが、原因を特定するためには欠かせないステップです。
猫の食物アレルギーの診断には時間がかかる
猫の食物アレルギーは一つの検査で診断できるような病気ではありません。
症状が似ている病気を除外し、除去食試験を行うことで診断にたどり着きます。
診断には飼い主さんの理解と協力が必要になりますが、原因が分かれば適切な食事管理によって症状の改善が期待できます。
病名がはっきりと分からず、もどかしい気持ちもあると思いますが、焦らず一緒に症状を見ながら診断を進めていきましょう。
このコラムが飼い主のみなさんの参考になれば幸いです。
「こんなこと聞いてもいいのかな」と思うことでも尋ねてもらえれば、病院として何かお手伝いができるかもしれません。



