猫がしきりに体をなめたり、耳や顔をかゆがったりしていると、
「なんの皮膚病?」
「猫のアトピーってすぐに診断できないの?」
と思う飼い主さんもいると思います。
しかし実際には、猫のアトピー(猫アトピー性皮膚症候群)とよく似た症状を示す病気が数多く存在します。
今回は、猫のアトピーがどのように診断されるのか、そしてよく混同される食物アレルギーとの違いについて解説します。

【猫のアトピー性皮膚症候群コラム】
第1回 猫が顔や首をかゆがる原因はアトピーかも|猫のアトピーの症状を獣医師が解説
第2回 猫のアトピーの診断方法|食物アレルギーやまぎらわしい病気との違い
第3回 猫のアトピーの治療方法|内服薬・注射・スキンケアについて
猫のアトピーを特定するための検査はない
「アトピーかどうかを調べる検査はないの?」
と質問されることがあります。
実は現在の獣医療では、猫アトピー性皮膚症候群を確定診断できる単独の検査はありません。
そのため、診断は
- 症状
- 発症年齢
- 病歴
- 皮膚検査 など
を総合的に評価し、他の病気を除外して行います。
除外診断を進めていくために、アトピーの診断には時間がかかる場合があります。
除外するべき病気
以下のように多くの病気を検討する必要があります。
また、アトピーと他の病気が併発することもあり、そうなると診断が非常に複雑になります。
皮膚の寄生虫感染
- ヒゼンダニ
- ツメダニ
- ニキビダニ など
皮膚検査によって寄生虫の有無を確認します。
皮膚感染症
皮膚に細菌や真菌(カビ)が増殖することで起こる病気です。
- マラセチア性皮膚炎
- 細菌性皮膚炎 など
ノミアレルギー性皮膚炎
ノミの唾液に対するアレルギーで、たった1匹のノミに刺されただけでも、
- 強いかゆみ
- かさぶた
- 脱毛
が起こることがあります。
まずは適切なノミ予防が行われているか確認します。
食物アレルギー
アトピーと最も症状が似ている病気です。
- 顔や首のかゆみ・かき壊し
- 過剰なグルーミング・脱毛
- 小さなぶつぶつ
- ただれたような赤み
などが共通してみられます。
その他の病気
体の違和感や痛み
例えば関節炎や膀胱結石などを抱える猫は、その異常がある部位付近の皮膚をしつこく舐めることがあります。
心因性
何らかのストレスにより体をしつこく舐めるようになることがあります。
きっかけとして、引っ越しや家族構成(人・動物)の変化、寝具などの変化が多いです。
蚊のアレルギー
実際に蚊に刺されたかどうかを確かめることは難しいですが、蚊が出現するシーズンに合わせて症状が出る場合は要注意です。
診断の進め方・検査方法
上に書いたような病気を除外するために、様々な検査を行います。
皮膚検査
- 毛検査
- ウッド灯検査
- 皮膚スタンプ検査
- 皮膚テープ検査
- 皮膚掻把試験 など
これらの検査により皮膚の寄生虫や細菌・真菌などを確認していきます。
その他の検査
レントゲン検査・超音波検査などにより皮膚以外の身体的な異常の有無を確認します。
食物アレルギーとの違いは?
飼い主さんが最も混乱しやすいのが、
「アトピーと食物アレルギーは何が違うの?」という点です。
共通する症状
上に書いたような症状が見られるため、見た目だけでは区別することができません。
アトピーの特徴
アトピーは環境中のアレルゲンが皮膚に付着することで炎症が起きます。
- ハウスダスト
- ダニ
- 花粉
- カビ など
アレルゲンによっては「季節性」を見せることもありますが、一年中症状が続くことも少なくありません。
食物アレルギーの特徴
食物アレルギーは食事中の特定のタンパク質に対する免疫反応です。
- 牛肉
- 鶏肉
- 魚
- 乳製品 など
この場合は「季節性」はないことが一般的です。
食物アレルギーを調べる「除去食試験」
食物アレルギーを診断するために最も重要なのが、除去食試験(食事試験)です。
これは、アレルギーの原因になりにくい療法食だけを一定期間与え、症状の変化を確認する方法です。
一般的には8〜12週間程度実施します。
この期間中は、おやつや人の食べ物などは与えないようにします。
除去食試験により症状が改善し、その後もとの食事で再発すれば食物アレルギーの可能性が高くなります。
血液検査だけでは診断できない
血液によるアレルギー検査も選択肢としてはあります。
しかし、血液検査だけで食物アレルギーやアトピーを診断することはできません。
現状のアレルギー検査では診断精度に限界があることが知られています。
そのため現在でも除去食試験や除外診断が基本となります。
アトピーの診断は時間がかかる
猫のアトピーは、ひとつの検査で診断できる病気ではありません。
上で挙げたような類似した症状の病気を除外することで診断を進めるため、時間がかかることも多いです。
すぐに診断がつかないこともありますが、検査や治療の経過を一緒に観察して焦らず診断・治療をしていきましょう。
このコラムが飼い主のみなさんの参考になれば幸いです。
「こんなこと聞いてもいいのかな」と思うことでも尋ねてもらえれば、病院として何かお手伝いができるかもしれません。



